オリジナルのエイリアンシリーズにつながる物語の序章がこの「エイリアン・コヴェナント」。その作品の中にはリドリー・スコット監督が様々な秘密やトリビアを忍ばせています。多くの人が見逃しているポイントをまとめてみました。
1、タイトルはエイリアン・コヴェナントじゃなかった
2015年の製作段階でリドリー・スコット監督は本作のタイトルが「Alien:Paradise Lost エイリアン・パラダイス・ロスト」になることを発表していましたが、急遽名前を「エイリアン・コヴェナント」に変更しています。
パラダイス・ロストとは実はイギリスの17世紀の詩人ジョン・ミルトンの代表作「Paradise Lost 失楽園」を指します。この作品は旧約聖書の『創世記』をテーマにした物語であり、これがそのまま「エイリアン・コヴェナント」のストーリーのモチーフにもなっています。
例えば「天国で仕えるよりも、地獄に君臨する方がいい」というセリフをアンドロイドのデヴィッドが口にしますが、そのセリフもまた「失楽園」の中で登場するセリフの引用です。
2、コヴェナントのクルーが全員カップルだった理由
旧約聖書の『創世記』に登場する代表的な物語のひとつが「ノアの方舟」です。「ノアの方舟」では神様が人間の堕落した姿を見て、洪水で滅ぼすことを決めます。
そのとき正しい人間であったノアに箱舟の建設を神様が命じたことで、ノアの家族と動物だけが生き残った、という話です。
ノアの箱舟に乗ったのは、ノアと妻、ノアの息子たちとその妻たち、動物のオスとメスといったように全てつがいになっていましたが、コヴェナントのクルーが全員カップルだったのも「ノアの方舟」が基となっているからです。
3、アンドロイドの名前の由来
冒頭のシーンでアンドロイドが自分にデヴィッドという名前を授けますが、そのとき彼の目線の先に一つの彫刻があります。そう、それはミケランジェロの「ダヴィデ像」です。
デヴィッドとはダヴィデを英語読みにした名前ですが、アンドロイドが人間の力強さや美しさの象徴であり、旧約聖書においてイスラエル王国の二代目の統治者の名前を選んだのは、その後彼が人類を支配しようとする展開を考えると、偶然じゃないことが分かります。
4、ブレード・ランナー
本作を監督したリドリー・スコット監督はSF映画「ブレード・ランナー」の監督しても知られています。そのためいくつか「エイリアン・コヴェナント」の中でも「ブレード・ランナー」にまつわるシーンが登場します。
劇中、緊急事態のときに宇宙船のモニターに映る図は、「ブレード・ランナー」のものとまったく同じです。
また、「ブレード・ランナー」で登場する有名なセリフの一つに「That’s the spirit その意気だ/そうこなくっちゃ」というのがありますが、「エイリアン・コヴェナント」でも同じセリフが使われています。
5、ラストシーンの解釈
コヴェナントのクルーたちが命からがら惑星を脱出するシーンではアンドロイドが最後ぎりぎりで宇宙船に同乗することに成功します。
そのとき頭によぎるのは果たしてこのアンドロイドはウォルターなのか、それともデヴィッドなのかということでしょう。片手がないことや声質を考えるとウォルターに違いないですが、最後の最後でアンドロイドが実はデヴィッドであることが明らかになります。
では一体どのようにしてデヴィッドは自分の正体を隠したままコヴェナントに搭乗することができたのでしょうか。コヴェナントは外部の者が侵入すると反応するセンサーが備わっています。つまりデヴィッドが乗り込んできた場合、それをすぐに察知するはずです。
しかしデヴィッドはウォルターになりすまして搭乗することに成功しています。それはおそらくデヴィッドがウォルターを制圧した後に自分の人工意識をウォルターの身体に移したからです。それによって声も身体もウォルターのままで、コヴェナントのシステムを欺くことができたと考えられます。
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