映画テネットにおいて最もスピーディーかつ、理解するのが難しかったシーンがカーチェイスシーンじゃないでしょうか。
そこでこの記事ではテネットのカーチェイスシーンを詳しく検証していきます。
時間の挟みうち
まず、カーチェイスシーンを理解するために大切なのは、時間の挟み撃ち、という概念です。
時間の挟みうちとは、一つの時間軸の中である人物が現在から未来へ、別の人が未来から過去へと逆行することを言います。
未来から過去へと逆行する人は、すでに起こった出来事を知っている、あるいは体験しているため、特定の時間に何が起こるかを理解しています。
その知識と体験をもとに再び同じ出来事に参加することで有利に立てる、あるいは逆側の時間の流れを行く人に便宜を図ることができるのです。
時間の挟みうちでポイントとなるのが必ず順行する側のチームと、逆行する側の2チームいることです。
分かりづらかったかもしれませんが、カーチェイスシーンにおいても、逆行するセイターと、順行するセイターの手下による二チームが共に行動していたのです。
そのためセイターをはじめ逆行していたチームはマスクをしていたのに対し、順行していたチームはマスクをしていなかったのです。
プルトニウムはどこへ消えたのか
そもそもエストニアのハイウェイでカーチェイスが起こったのは、九つあるアルゴリズムの一つであるプルトニウム241をめぐってでした。主人公とニール、そしてセイターたちも同じプルトニウを追いかけていたわけです。
しかしあのシーンを見ると、プルトニウが道路の上で行ったり来たりしてどこに消えたのかよく分からなくなっていましたね。
そしてあやふやのままカーチェイスがいつの間にか終わり、オスロ空港のシーンへと移っていった、という印象を受けたんじゃないでしょうか。
まず、主人公が順行していたとき、プルトニウムはもともと装甲車の中にありました。そこで消防車などを使って主人公が装甲車に侵入し、プルトニウムを奪いました。
そのタイミングで、未来から過去へと逆行してきたセイターが逆走しながら登場します。そして妻のキャットを殺すと脅しました。
キャットを殺されたくなかった主人公はたまらずプルトニウムが入ったオレンジ色のスーツをケースをセイターの車に向かって投げます。
しかしよく見ると、あのとき主人公はケースだけセイターに向かって投げましたが、中身のプルトニウムは投げませんでした。順行のシーンでプルトニウムが最後に映っていたのは主人公の車の中でした。
一方、逆行のシーンではどうでしょうか。時間を逆に進みながら主人公は先ほどの現場に猛スピードで向かいました。そして過去の自分がプルトニウムのケースを投げるタイミングでセイターと過去の自分の車の間に割って入っていきます。
そして順行のときには映っていませんでしたが、実はあのとき過去の主人公が、未来から逆行してきた主人公の車の中へとプルトニウムを投げていたのです。
つまりどういうことかというと、プルトニウムは最終的には逆行していた主人公の車のバックシートの中に落ちていたのです。
これを順行の目線で見ていくと、主人公はあの状態から港にあったセイターのアジトにまで戻っていくことになります。そしてプルトニウムはあのとき港に止まっていた車のバックシートの中にすでにあった、ということになるのです。
逆行の世界では結果が原因よりも先に来るので、逆行目線の主人公が、過去の自分からプルトニウムを受け取る前にはすでにプルトニウムが車の中にあったことになるのです。
これを裏付けるシーンが一つあります。それは初めて主人公が逆行の世界に踏み入れ、車に乗り込んだとき、彼がまず一番最初にしたことはバックシートを確認することでした。そう、あのとき主人公は車の中でプルトニウムを見ていたのです。
セイターはいつプルトニウムを奪ったのか
ではセイターは一体いつあのプルトニウムを奪ったんでしょうか。それは残念ながら物語の中では語られていません。全ての出来事が起こってから、また時間の逆行と順行を繰り返し、港にとめてあった主人公の車から奪ったと考えられそうです。あるいは全く別の出来事のときに奪った可能性もありますね。残念ながらそれを描写するシーンはありませんでした。
いずれにしても主人公がプルトニウムを持っていた、ということが分かっただけでも一つすっきりしたのではないでしょうか。
以上、テネットのカーチェイスシーンについてでした。