人気ドラマシリーズ「ウエスト・ワールド」で知られるリサ・ジョイが監督したSF映画レミニセンスを鑑賞したので、あらすじと感想を辛口で述べたいと思います。結論からというと、かなりひどいです。
レミニセンスのあらすじ
大都市の一部が海水に沈んでしまった近未来マイアミで元軍人のニック・バニスターは過去の記憶を呼び起こすことのできるマシーンを使って人々に美しい思い出を追体験させるセラピーをしていました。
そんな彼のもとにある日、美しくミステリアスな女性メイが現れます。メイは鍵を無くしたからここ数日の記憶をさかのぼりたいと言います。
メイの記憶をたどるうちにニックはメイがバーで歌手をしていることを知り、彼女の歌声や魅力に惹かれ、たちまちのめり込んでいきます。
そしてニックは別の日にメイが働いているバーを訪れ、彼女と再会しました。それをきっかけに二人は恋人関係になり、お互い相思相愛のはずでした。
ところがそんなメイはある日、突然姿を消してしまいます。そのことでニックはメイとの思い出に取りつかれ、マシーンに自分をつないで自分自身の記憶をたどる毎日を送るようになります。
一方、中国系麻薬組織のボス、ジョーを追っているマイアミの検察からニックは捜査の協力を依頼されます。そこでニックは瀕死の状態で発見された組織のメンバーの男に記憶のマシーンをとりつけ、麻薬組織の中で一体何があったのかを探ろうとしました。
ニックが男の過去の映像をさかのぼって見ていると、あろうことかそこにはメイの姿があり、彼女が麻薬組織と深い関わりを持っていることを知るのでした。ニックが知るメイは全く別の顔を持っていたのです。
一体、メイはどこに行ってしまったのか。そして彼女の正体は何者なのか。ニックは真相を探るべく様々な人の記憶を頼りに命懸けでメイを追いかけるのでした。
レミニセンスの感想
映画レミニセンスは「テネット」などのSF作品でお馴染みのクリストファーノーラン監督の弟、ジョナサン・ローランが製作を担当したこともあり、一部のファンの間では大きな期待が寄せられていました。
おそらくまだ見ていない人の中には「あなたの記憶に潜入する」といったキャッチコピーに惹かれて、見てみようかなと思っている人も少なくないでしょう。
また、記録の中にある深層世界、記憶に隠されたトリック、といったワードを聞いて、「インセプション」を連想させたのではないでしょうか。
しかしそれらの期待は見事に裏切られます。なぜならそもそも本作はSF映画を装ったただの恋愛映画だからです。
メインのストーリーは主人公の男が行方不明になった恋人を探すことで、世界の滅亡を防ぐことでも、事件を解決することでもありません。
なんなら人々の記憶を呼び起こす、というプロットすら必要ないぐらい、勇敢な男によるベタな恋人の救出劇なのです。
本作の最大の問題はたくさんの設定を設けているわりには、それぞれの設定がほとんどメインのストーリーに関係してこない点です。
例えばマイアミの街は浸水し、人々はボートに乗って移動をするのを強いられている、という背景については特に説明がなく、なぜあんな状態になったのかも分からないままストーリーが進みます。
おそらく腐敗しきった社会、希望を失ったディストピアの雰囲気を出すために意図的にそうしているんでしょうが、それが記憶の中に潜入していく話とは最後までリンクしないのです。つまりあってもなくてもいい設定なのです。
時代設定も記憶マシーンが作られるのほどのテクノロジーの発達した時代になっているのにも関わらず、外の景色はもちろん、建物の中にも未来を感じさせるものがほとんどありません。
主人公のキャラ設定も、あるときは記憶に潜入する科学者、あるとき軍人、またあるときは刑事、みたいな感じでごちゃごちゃになっていて、何分も海中の中で息を止めることができたり、高い建物から飛び降りても平気だったり、武器を持っている相手を素手で倒したりといったように、とにかくなんでもかんでもできすぎなのがダメでした。
その一方でそもそも彼がどんな人間で、どんな人生を送って来たかということすらまともに描かれていないため、主人公に感情移入や共感ができず、そのせいで彼が一生懸命さがしている恋人の行方も別に知りたいとも思えないのです。
主人公のキャラ設定は、映画のジャンルそのものにも反映していて、SF映画と思ったら突然刑事ドラマになったり、また次の瞬間にはカンフー映画になったり、そうかと思ったら最後はコテコテの恋愛ドラマで締めくくったり、と作品としての統一感が一切ないです。
それなのに予告動画や宣伝ではSFサスペンス超大作といったようにSFでゴリ押しているのは違和感を覚えました。おそらく予告動画につられてこの映画を見たら、まさかこんな話しだとは思わなかった、という感想を抱くんじゃないでしょうか。