DCコミックのヴィランを基にした映画ジョーカーが劇場公開され、各方面から高い評価を受けています。そこで本作にまつわるトリビアの数々をまとめてみました。
映画ジョーカーが影響を受けた映画作品
映画「ジョーカー」のゴッサムシティを見て、真っ先に思い出される作品。それはマーティン・スコセッシ監督の「タクシードライバー」じゃないでしょうか。
ゴッサム・シティはもともとニューヨークやシカゴの街並みをモチーフにした架空の都市ですが、映画「タクシードライバー」も舞台はニューヨーク。そしてタクシードライバーも主人公が狂気に陥る様子を描いたダークな物語で、本作と共通点が少なくないです。
タクシードライバーでも、ジョーカーでも主人公が自宅で銃をいじるシーンがありますね。また、手を拳銃の形にして頭を撃ち抜く仕草を両方のキャラクターがやっています。
ちなみに映画「タクシードライバー」の監督マーティン・スコセッシは、本作のエグゼクティブプロデューサーを務めています。
ほかにもマーティン・スコセッシ監督の「キング・オブ・コメディ」からも影響を受けています。
「キング・オブ・コメディ」ではコメディアンを志す主人公の男が、人気TV司会者に異常なまでに執着していく様子を描きますが、それは映画ジョーカーのアーサー・フレックと重なる部分がありますね。
ちなみに本作には「タクシードライバー」と「キング・オブ・コメディ」で主演を務めたロバート・デ・ニーロもコメディーショーのホスト役で登場します。
映画ジョーカーの元ネタ
映画ジョーカーの脚本は大部分がオリジナルストーリーですが、部分的には1988年に発売されたグラフィックノベルの「バットマン・ザ・キリング・ジョーク」がベースになっています。
バットマン・ザ・キリング・ジョークでは、映画ジョーカーと同じように主人公は売れないスタンドアップコメディアンという設定になっています。しかしジョーカーの職業はエンジニアで、妊娠中の妻がいるなど、映画とはかなり背景が違うのが特徴です。
また、バットマンのミニシリーズ、「バットマン: ダークナイト・リターンズ」では、ジョーカーがTVのトーク番組に登場するシーンがあり、番組にはドクター・サリーと呼ばれる老人の女性キャラクターが同席します。そしてジョーカーは登場すると同時に彼女にキスをするのです。そのシーンは映画の中でも再現されていましたね。
ちなみに「バットマン: ダークナイト・リターンズ」でもジョーカーは司会者を殺害します。
チャーリー・チャップリン
予告動画の悲劇的なBGMとして使われている曲は、チャーリー・チャップリンの「スマイル」です。実はこの曲、映画「モダン・タイムス」で起用されたテーマソング。
労働者の個人の尊厳が失われ、機械の一部分のようになっている世の中を笑いで表現した喜劇ですが、ゴッサムシティで不当な扱いを受けるジョーカーの状況ともマッチしています。
予告動画では劇場で「モダン・タイムス」が上映されているシーンまであり、チャーリー・チャップリンからも多大な影響を受けていることが分かります。
ゴミストライキ
ゴッサムシティでは労働者によるゴミストライキが行われ、街にゴミが散乱する非常事態に陥っていました。そのせいで街は不衛生になり、大きなネズミが溢れるカオスな状況になっていましたね。
一見、さも漫画的なシチュエーションのように感じられますが、実はあれと同じことが1968年にニューヨークで実際に起きたことがあります。
ゴミ収集業者で働く労働者たちは少ない賃金に抗議するためにゴミの回収を拒否し、9日間でニューヨークの街にはなんと3万トンにもおよぶゴミの山ができたそうです。
つまり映画ジョーカーのあの世界観は、現実ともつながっているのです。
ケイン
アーサー・アフレックが通う心理カウンセリングのカウンセラーといえばデボラ・ケイン。
アーサー・アフレックは彼女に対し、自分が抱える日々の問題を相談しますが、彼女はほとんど彼の話に聞く耳を持たず、薬を処方するだけの存在でした。
最終的に市の予算削減のためカウンセリングは打ち切りとなり、アーサー・アフレックは薬をもらうことができなくなり、ピンチに陥ります。
そのときもデボラ・ケインは自分にできることは何もないと言って、アーサー・アフレックに別れを告げるのでした。
そんなデボラ・ケインは、実はバットマンとジョーカーの共同クリエイターの一人、ボブ・ケインから名前が付けられており、ジョーカーの生みの親のオマージュともいえるキャラクターだったのです。
バットポール
アーサー・アフレックが自分の父親だと信じるトーマス・ウェインを尋ねたとき、門の前で後にバットマンとなる少年ブルース・ウェインと遭遇します。
アーサー・アフレックは手品などを使ってブルースの気を引こうとしますが、結局関係者に見つかり、門前払いされてしまいます。
あのシーンでブルース・ウェインが一人庭で遊んでいるとき、彼がポールにつかまって滑り降りる場面があります。あのシーンは1966年のバットマンシリーズに登場するバットポールをモチーフにしていると考えられそうです。
ブルース・ウェインは自分の家の庭にあった、あのポールからアイデアを得てバットポールを考案したのかもしれませんね。
ジョーカーの相棒ギャギー
DCコミックにおいてジョーカーには、人気キャラクターのハーレイ・クインの前にギャギーことギャグスワースと呼ばれる相棒がいました。
ギャギーは小人症のピエロで、ジョーカーと共に凶悪犯罪を起こしていきますが、それはまさに映画ジョーカーに登場したゲリーと重なりますね。
ちなみにギャギー(Gaggy)とゲリー(Gary)は英語で書くと、 スペルがとても似ているのが特徴で、本作では優しい人物として描かれていたゲリーも今後続編でジョーカーの影響を受けて凶悪なヴィランとなる可能性が高いです。
ヒースレジャー
ラストのクライマックスシーンでジョーカーは暴動の参加者によってパトカーから救出され、ボンネットの上に立ち、自分の血を使って割けた口を描きます。
あの一連のシーンのジョーカーは、映画「ダークナイト」でヒース・レジャーが演じたジョーカーとそっくりでしたね。
一方でジョーカーを演じたホアキン・フェニックスはヒース・レジャーを始め、過去の作品のジョーカーを参考にはせず、オリジナルのジョーカーを表現をするようにしたとインタビューで語っています。
それでも二人の俳優によるジョーカーがまるで同じ人物が演じているかのような瞬間が生まれたのは奇跡のようでもあります。
アーサー・フレックの父親
劇中、アーサー・フレックは母親の手紙に、彼の父親は政治家のトーマス・ウェインであると書かれていることを目にします。
しかし実際に本人に事実関係を確認しに行くと、猛烈に否定され、母親を異常者扱いされてしまいます。
精神病院の記録では確かに母親には妄想癖があり、アーサー・フレックは実の息子ではなく、養子であることが記されていました。
となると、アーサー・フレックはやはりトーマス・ウェインの息子ではないのでしょうか。
これについては様々な説があり、そもそも病院の記録自体がでっちあげられたものだというのがその一つです。
というのも母親が持っていた古い写真の裏には「君の笑顔が好きだ」というメッセージと共にTWというがサインが入っていたからです。TWとはもちろんトーマス・ウェインのことです。
11時11分
映画ジョーカーでは何度か時計が登場する場面がありますが、多くの場合時計は11時11分を指しているのが特徴です。
例えば、アーサー・フレックがカウンセリングを受けている際に時計も11時11分なら、彼が精神病院に入っているときの時計も11時11分でした。
11時11分はスピリチュアルな世界において物事のスタートを意味したり、思考が現実化することを示す宇宙からのサインなどと言われています。
また、11時11分は左右対称の数字であり、物語の二重性を象徴しているとも言えそうですね。現実と妄想の二つの世界が対照的になっている本作にはぴったりの数字ですね。
ちなみにホラー映画アスでも同じように11:11という数字が何度も登場します。
ウェインファミリーが見ていた映画
トーマス・ウェインとマーサ・ウェインは息子のブルースを連れて映画館から出て来たところを強盗に襲われ、命を落とします。
事件の前に家族が映画館で見ていた作品といえば「ゾロ」です。ほかにも同じ映画館では、ミッドナイトクロスが上映されていましたが、どちらも1981年公開の作品で、映画ジョーカーの舞台となっている時代ともマッチしています。
ちなみに家族があのときにゾロを見ていた理由は後にブルース・ウェインがゾロの黒いマスクからインスピレーションを受け、バットマンのマスクを使うようになるから、と言われています。